「圧迫面接」に直面しないか不安になる、という方は多いようです。確かに、新卒採用の時も中途採用の時も、一定数が圧迫面接の経験について話していますよね。
第二新卒の転職においても、新卒採用とはことなる「転職」という活動において、覚えておきたい面接対策のひとつと言えるでしょう。
今回は企業が圧迫面接を行う意味や注意すべき点を説明した上で、圧迫面接の事例と対策についてご紹介していきます。
この記事の目次
ハイリスクでも企業が圧迫面接をする2つの意味
「新卒の就職活動で圧迫面接を経験したことはありますか?(※)」というアンケートに対して、約64%の就活経験者が「経験あり」と答えています。
(※)…就活を経験した社会人1~3年目の212人を対象に、2018年6月14日~6月17日の期間で実施した調査結果より
圧迫面接の意味と意図
圧迫面接とは、わざと応募者が答えにくい意地悪な質問をする、あからさまに高圧的な態度をとって精神的苦痛を与えるといった、面接官の正常ではない面接方法を指します。
- 残業の多さや給料の低さなどの話で不安にさせる
- 「時間の無駄なので」といった不快感を煽る言動を繰り返す
- 「学歴低いね」など挑発的な言動で怒らせようとする
- 舌打ち、ため息などを聞こえるように行う
- 「それで?」「欲しい答えじゃない」と否定的な返答を繰り返す
また、面接で不信感を抱かせたことで優秀な人材が内定を辞退するなど、採用側としては本末転倒な結果にもなり得ます。
これほどのリスクを負ってまで圧迫面接を結構する理由は、書面や質疑応答だけでは判断しにくい深部を垣間見ることが目的、と言われています。
「優秀な人材を採用しても、社会へのストレス耐性が低くすぐ退社した」「面接では理想の人柄だったが、一緒に働くと全く逆の人間性が判明し、見抜けなかったことを後悔」など、採用側が不安に思うことを面接時に明らかにできる手法、という認識で実施されるケースが多いようです。
圧迫面接で能力(問題対応力など)を見たい
業界によっては理不尽な場面に遭遇することも多く、顧客と接客する機会の多い職種などは圧迫面接でストレス耐性をみようとするケースがあります。そのほか、精神的負荷のかかりやすい組織体系を持った企業も、面接で対応力を判断したいと考えるようです。
圧迫面接で反応(人柄)を見たい
建前やマニュアルに沿った回答ではなく、素に近い返答を得たいために圧迫面接を行うという意見もあります。感情を揺さ振ることで「怒りやすい」「忍耐強い」など、言葉で聞くだけではわからない部分を引き出そうとしている訳です。
企業が圧迫面接を行う意図を聞いても「納得できない」と感じる方は大多数いらっしゃると思いますが、その感覚も間違いではありません。
近年では「圧迫面接」に否定的な意見も多い
企業が負う圧迫面接のリスクとして“機会損失”や“訴訟”などを例に挙げましたが、リスク承知で実行したからといって、圧迫面接が応募者に与える負荷の弊害が肯定されるわけでは無いと近年指摘されはじめています。度が過ぎた圧迫面接により被面接者が心身に障害を受ける例や訴訟問題となった例もあります。
圧迫面接によって企業が理想的な人材が採用できたとしても、面接時に受けた精神的ダメージが内定によって無かったことになる訳ではありません。
入社後も会社に対して不信感を抱くかもしれませんし、無意識に後輩へ威圧的な態度をとってしまうようになるなど、人材育成という視点でも悪影響となる可能性が非常に高いのです。
圧迫面接で転職に不安を抱いた方は「辞退」という選択肢もあり
繰り返しになりますが、圧迫面接自体ははっきり「マナー違反」と言える行為です。採用側も意図があっての行動かもしれませんが、精神的負荷を与えていい理由にはなりません。
「いざ入社してからは笑い話になった」という意見もありますが、その点は周りに流されず自分の気持ちに正直になった上で判断しましょう。内定の連絡が来ても辞退する権利があるので、不信感を持ってしまった場合はその旨を伝えましょう。
圧迫面接を通過したことが入社後の評価に直結する訳ではないので、第一希望の企業だったため入社したいが面接官と再度顔を合わせることが嫌で判断に迷っているという場合は、内定の連絡をもらった際に「面接を担当していただいた〇〇さんと同じ部署の配属になるのでしょうか?」と聞いておくと入社前の不安も少しは減るはずです。
「意味のない圧迫面接」「勘違いされやすい面接官」の存在も知っておこう
高圧的な態度や聞く気のない素振りなどが、すべて「圧迫面接だ」と思って応えていこうと努力するのは体力が勿体無いですよね。人材発掘という意図もなく、かつ威圧的な態度をとっている自覚がない面接官が存在することも知っておきましょう。
【ケース1】情報が十分に共有されていない社員が面接官
事前に情報が共有されない(書類通過・一時面接通過の経緯を知らない)まま、同部署の採用という理由で突然面接に同席させられた社員が、あまり応募者に興味を持てていない状態。
規模の大きい企業は採用担当者が明確に決まっているものですが、中小企業の場合は他部署の社員が兼任していることも多いため、このケースに当てはまりやすいと言えます。
【ケース2】採用に激しくプレッシャーを感じている面接官
過去に採用した社員が退職続き、今すぐ採用しないと業務が回らない、採用自体が初めて……。
ケースバイケースではありますが、面接官が採用に対して強いプレッシャーを感じる環境にあり、余裕の無さから質問攻めを行う場合もあります。こちらも少人数規模の企業で起こりやすい傾向にあります。
【ケース3】採用枠は埋まっている面接官
中途採用は予定の内定枠が埋まった後でも面接を続けるケースが多いと言われています。
その理由は、内定予定者が辞退した場合の補欠枠の確保、優秀な応募者がさらに現れる可能性を考慮した猶予期間、などが挙げられます。
しかし多くは最初に決定した内定予定枠で確定となるので、採用自体が面接官の中で終了しているため、その空気が伝わってしまったことで圧迫面接と受け取られるケースです。
【ケース4】面接官の元々の性格
第二新卒などの転職の場合、社会人経験があるので突っ込んだ質問をしてフランクな会話を試みようとする面接官もいます。これが緊張している応募者にとっては意地悪に感じる訳です。
そのほか、横柄な態度だととられることを全く自覚せずに失礼な所作を見せてしまう方や、同僚と過ごす時と同じ態度を見せたい(いわゆる自然体)というクセのある方もいます。無自覚であれ自覚ありであれ、 “厄介な人”ですね。
擁護する必要はありませんが、面接官も完璧な人間ではありません。すべての行動・言動に大義名分がある訳でもなく、企業である以上、逆に転職希望者から批評される立場にもある訳です。そして人間同士の相性という数値化できない点もあるため、圧迫面接の明確な定義を提示して採用側を一方的に批判するのも難しいというのが現実です。
とは言え、転職活動を頑張る皆さんに「圧迫面接の対策は諦めろ」というのも極論になってしまいますよね。転職活動へのモチベーションを維持するためにも、実際に圧迫面接(怖いもの)に遭遇した時のためのお守りは確かに持っておくべきです。
次の章では、実際によくある圧迫面接の事例とその回答例対処法をご紹介します。
圧迫面接で「キレる」のは絶対NG!圧迫面接5つのエピソードと対処法
圧迫面接は表面的に見ると完全に面接官に非がある構図なので、 “面接官を論破することで内定をもらえた”という体験談が散見されます。
その姿勢が実際に有効な場面もありますが応用が難しいため、ここで紹介する対処法は、先にお話しした圧迫面接の意図を汲んだ上で、以下のポイントに沿った汎用的な内容に絞ります。
- 感情的にならず、論点を戻すよう心がける(コミュニケーション力)
- 相手の言動を否定せず、ポジティブに処理(ストレス耐性)
- 自分のペースを保つ(アンガーマネジメント力)
付け焼き刃ですべてのパターンを把握することは難しいので、圧迫面接の負の流れを“一文で変える”ことに集中してみましょう。
圧迫面接のエピソード①「否定的な返事を繰り返される」
面接官:転職理由について話してください。
Aさん:はい、私は…(1分間で簡潔に話す)。
面接官:それだけですか?
Aさん:もっとお時間頂いてよろしいなら続けさせてください。
面接官:いや、いいよ。
Aさん:わかりました。
面接官:…でもその理由なら、入社してもすぐ辞めるんじゃないですか?
Aさん:いえ、御社の○○という企業理念に深く共感しており、生産管理体制が…
面接官:それは、あなたの職場とうちでそんなに変わらないですよ。わかってますか?
Aさん:はい、すみません……。
圧迫面接の回答例①
「聞く耳持たない」ケースは、応募者が雄弁なタイプの方でも会話の雰囲気を変えることは難しいでしょう。面接を早く切り上げようとされることもありますし、話すほど悪化することが多いはずです。
その場合は相手の指摘を復唱し、非(とは限りませんが)を認めた上で、自身の考えを伝える1分を確保することだけに集中しましょう。
圧迫面接のエピソード②「返答に困る質問が続く」
面接官:同じ業種の会社は色々ありますが志望理由は何ですか?
Bさん:はい、僕は……(志望理由を話す)。
面接官:なるほど。本音は?
Bさん:え、本音ですか?
面接官:お給料じゃないの?
Bさん:いえいえ!そんなことないですよ!(笑)
面接官:皆すごい立派なこと話すけど、本音が聞きたいんだよね。結局お給料が不満で辞める人多いし。
Bさん:そうなんですね、確かに条件はとても良いと感じていますが…。
面接官:やっぱり給料だよね、あとは?家から近いとか?
Bさん:えっと…(本当に仕事内容に興味があるのに…)
圧迫面接の回答例②
1つ目は「ストレス耐性やコミュニケーション能力」を判断するための意図的な圧迫面接で、この場合は笑顔が少なかったり、あっても印象の悪い態度であることが多いです。
2つ目は単に「ラフな会話」を試みようとしているだけの可能性があります。“圧迫面接と勘違いされやすい”ケースで、この場合は考えよりも自然な流れで回答が返ってくることを期待しています。
転職活動の場合、社会人同士の会話なので後者のケースも多々あり、ポイントはラフな会話でも社会人のマナーを厳守することです。
圧迫面接のエピソード③「とにかく面接を切り上げようとする」
面接官:志望動機は以上ですか?
Cさん:はい。
面接官:…わかりました。では、面接終了しましょうか。
Cさん:志望動機しかお話ししていないので、自己PRのお時間など頂いてもよろしいでしょうか?
面接官:特に聞きたい項目もないので、書類で確認します。
Cさん:…応募書類に書ききれていないこともあるのでもう少し時間を頂きたいです。
面接官:……。あなた以外にも面接希望者が控えていて忙しいので。
Cさん:…はい、失礼しました。
圧迫面接の回答例③
面接を一方的に中断するタイプの圧迫面接は、「忙しい」など応募者が萎縮するようなワードを併用するのが特徴です。
営業職の中でもハードな業界の場合、いわゆる門前払いにアプローチできる人材かを判断するために圧迫面接を行うケースがあるそうです。
とにかく簡潔に、かつ所要時間や内容などを明確にしてみるしかありません。この問いかけを断るようであれば本当に聞く気がない、または時間が押しているなどの事情があるのかもしれませんし、どのみち確度は低いと言えます。
圧迫面接のエピソード④「人格などを否定してくる」
面接官:Dさんは特に目立った学歴や経験はないですね
Dさん:華やかな経歴はありませんが、〇〇での経験は入社後も活かせると思っています。
面接官:本当に貢献できるレベルですか?
Dさん:断言はできませんが、精通していると思っています。
面接官:まず、履歴書が読みづらいですね。性格は雑な方ですよね。
Dさん:大雑把な一面はありますが…
面接官:話や書類では、今の所パッとしない印象ですが、自己PRでもします?
Dさん:…はい、私の長所は…
面接官:ふーん…
Dさん:(話しにくい…)
圧迫面接の回答例④
※自己PRに繋げる
理不尽に否定を繰り返すケースは、圧迫面接の中でも一番質の悪いものです。個人面接の場合だけでなく、グループ面接の中で一人だけこのような威圧をかけられた経験のある方もいるそうです。
内容によっては面接官側がアウトなのですが、その場をかわしたい場合はとにかくポジティブに解釈して、入社への意欲などに繋げられるよう意識してみましょう。
圧迫面接のエピソード⑤「もし泣いてしまったら」
面接官:(Eさんに高圧的な態度をとった上で)最近は泣く人が多いよね。
Eさん:…すみません。
面接官:お客さんからクレームが来たときも、泣けばいいと思ってる?
Eさん:……
面接官:前の職場でも同じようなやり方でやって来たの?
Eさん:…
圧迫面接の回答例⑤
泣く、押し黙ってしまう、不機嫌な態度を返してしまう、これらは圧迫面接で一番避けたい感情的な行為です。しかし、涙が出るのは生理現象なので面接官の理不尽な言動に驚いた拍子に出てしまうこともあり得ます。
問題は、そこから「黙る」「怒る」といった行動に繋げないこと、日常的に起こる事ではないと一言伝えておくことです。
また、自分が泣いていることに気づいて、更に呼吸が乱れることもあります。この例文は最終手段としてすぐに出てくるようにしておくといいでしょう。一言話せれば、自然と落ち着ける可能性も高くなります。
どうしても涙や感情が収まらないと感じたときは、無理にその場に居ても状況はよくならないので、丁寧な一礼をした上で退席をし、お詫びの連絡を入れましょう。
まとめ
もし圧迫面接の対応に失敗しても、それを後悔する必要はまったくありません。今回は圧迫面接の是非についても多少触れましたが、皆さんは必ずこの壁に真っ向からぶつかる必要はないことも頭に入れておいてください。
第一希望の企業だからこそ「なぜそのような面接をするのか」と向かっていく方もおられるかもしれませんが、「今日は運悪く、嫌な面接に当たったな」とかわすくらいの心持ちでも良いのです。
転職活動を進める上では、圧迫面接の対策は“もしもの時の護身術”くらいの感覚にとどめ、同じ時間をキャリアプラン、志望動機、自己アピールなどをブラッシュアップする時間に充てるようにしましょう。