PPIHは、「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」の略称。
※2019年2月1日にドンキホーテホールディングスからPPIH(パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)へ社名変更。
この記事の目次
安田隆夫とは
安田隆夫さんはディスカウントストア「ドン・キホーテ」の創業者として有名な人物であり、PPIHの創業会長兼最高顧問や安田奨学財団理事長を務めています。
ドン・キホーテ1号店開店以来32期連続増収増益を達成している背景には、安田隆夫さんの逆張りの発想や顧客最優先主義の徹底があり、優れた経営手腕と思い切った行動が急成長のカギとなりました。
現在はシンガポールに住みながら「DON DON DONKI」などを主体にした、海外での新事業(新業態)の起業と市場開拓を強力に推進し、第二創業期を迎えたPPIHが海外でも支持されるグローバル企業になることを目指しています。
プロフィール
- 名前:安田隆夫(やすだ たかお)
- 生年月日:1949年5月7日
- 年齢:73歳(2022年7月時点)
- 出身地:岐阜県大垣市
- 最終学歴:慶應義塾大学法学部
- 所属:PPIH(元ドンキホーテHD)/安田奨学財団
人物像
安田隆夫さんの趣味は読書と格闘技観戦で、大学在学中にはボクサーに憧れてジムに入門したことがあり、格闘技に精通している人物としても知られています。
幼少期に左目の視力をほとんど失ってしまったことが原因でボクサーへの道を断念し、起業することとなりましたが、会社設立後には女子レスリングや日本の総合格闘技イベントPRIDEなどのスポンサーを引き受けています。
また、安田隆夫さんの信念としては「逆張り」を掲げていて、既存の流通セオリーやチェーンストア理論にとらわれない戦略、各店舗の現場の一人ひとりに権限を委譲する運営方針などがドン・キホーテの成長を後押ししました。
安田隆夫の経歴と現在の活動
そんな安田隆夫さんの大学卒業後の経歴から現在の活動までを紹介します。
18坪のディスカウントショップ「泥棒市場」を開店
1973年に慶応義塾大学を卒業した安田隆夫さんは不動産会社に入社するもすぐに倒産してしまい、1978年に東京都杉並区にて18坪のディスカウントショップ「泥棒市場」を開店しました。
コンビニエンスストアが深夜11時までの営業だった当時、安田隆夫さんはナイトマーケットの需要を発見し、深夜12時まで営業。また、現在のドン・キホーテでは当たり前となっている圧縮陳列や大量の手書きPOPなどが話題を呼び、泥棒市場はたちまち年商2億円を売り上げる繁盛店となりました。
しかし、開店からわずか5年で泥棒市場を売却しています。
現金問屋運営を経てドン・キホーテを開店
その後は現金問屋を運営してここでも大きな利益を上げました。
しかし小売業への再参入を決意した安田隆夫さんは、1989年に東京都府中市にてドン・キホーテ1号店を開店し、株式会社ドン・キホーテ(現在のPPIH)を創業しました。
ドン・キホーテは泥棒市場のノウハウを引き継ぎ、創業当初から常識にとらわれない発想で革新を起こし続け、幾多の試練を乗り越えながら成長し続けてきました。
また、2005年に就任したPPIHの代表取締役会長兼CEOを2015年に退任し、同社の創業会長兼最高顧問に就任するとともに、Pan Pacific Retail Management(Asia)Pte. Ltd.の会長兼社長兼CEOとして「DON DON DONKI」を創業しています。
現在の活動
2015年より国内事業をPPIH現社長に任せ、安田隆夫さんはシンガポールにてDON DON DONK(海外事業)の運営に力を入れています。
2019年には非常勤のPPIH取締役に復帰しました。
会社経営の他、2005年には公益財団法人 安田奨学財団を設立して理事長に就任。経済的な理由で就学が困難な留学生に対して奨学金を支給し、国際的な人材の育成と海外諸国との友好親善の資とすることを目指しています。
「顧客最優先主義」と「商圏第一主義」の徹底
安田隆夫さんは創業以来「顧客最優先主義」を徹底し、大手小売企業の真似はしないという独自の逆張りの発想を貫いてきました。
その創業精神は、現在のPPIHでも企業原理として継承されています。
そんな安田隆夫さんだからこそ、海外進出時にシンガポールで日本の食品が日本の2~4倍の価格で売られていたことを知った際には「お客さまを軽視している」と憤りを感じたそうです。
そのため、DON DON DONKI創業時にはPPIHで徹底されている「顧客最優先主義」と商圏に合わせて政策を変える「商圏第一主義」を踏まえて業態を組み立て、食品メインの商品構成としました。
「顧客最優先主義」と「商圏第一主義」を徹底したことで、DON DON DONKIは現地の人々に愛される人気店となり、海外進出は成功を収めたのです。
安田隆夫が最高顧問を務めるPPIHってどんな会社?
正式名称は株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(Pan Pacific International Holdings Corporation)となります。
主な事業
PPIHの中核事業はドン・キホーテとMEGAドン・キホーテによるディスカウントストア事業と総合スーパー(GMS)事業です。
国内ではドン・キホーテ、MEGAドン・キホーテ、New MEGAドン・キホーテ、ドン・キホーテUNY/MEGAドン・キホーテUNYがディスカウントストア業態を展開、アピタ、ピアゴ、長崎屋などは総合スーパー業態を展開しています。また、驚安堂やピカソ、エッセンスなどはスモールフォーマット業態に位置します。
海外では、ドン・キホーテ USA、MARUKAI CORPORATION、DON DON DONKI、Times、Gelson’s Marketsによるスーパーを展開しています。
PPIHへの商号変更
2019年に、環太平洋地域でのグローバルグループになるという意味を込めて株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)へと商号を変更しました。
これは、お客さまのニーズにお応えするため、多彩な店舗フォーマットを全国に展開するとともに、M&Aや独自の業態開発による海外展開も加速させるため日本国内のみならず環太平洋地域におけるグローバルグループとして相応しい企業のあり方を表す商号への変更でした。
持株会社になる利点としては、グループがドン・キホーテだけではなく複数企業の集合体であることを消費者にアピールできたり、M&Aにおいてスムーズに買収や合併ができたり、逆に敵対企業からの買収を防衛しやすくなったり、グループ全体を統制することで統一された経営戦略を推し進めることができるといったメリットがあります。
PPIHとして設立後はタイ1号店「DONKI MALL THONGLOR」や香港1号店「DON DON DONKI ミラプレイス2店」をオープンさせ、PPIHの今後の成長を予感させる、好スタートをきっています。
PPIHのルーツ
PPIHのルーツは、創業者の安田隆夫さんが1978年に西荻窪にオープンさせた雑貨店「泥棒市場」です。この「泥棒市場」はわずか18坪しかなく、ドン・キホーテの代名詞である“圧縮陳列”はこの狭いお店で陳列方法やポップなどにより、工夫して商品を並べた結果生まれたものです。
1980年には卸売販売・小売販売の株式会社ジャストを創業し、これが株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)の母体となっています。
そして1989年のドン・キホーテ府中店のオープンから「激安の殿堂」というキャッチフレーズや、店内に流れる思わず口ずさんでしまうドン・キホーテのテーマソング「ミラクルショッピング」、ドン・キホーテ公式マスコットキャラクター「ドンペン」などアミューズメント性を重視し、お客さまが宝探しをしている感覚を体験させる店舗づくりをして店舗数を増やしていきます。
さらに、ドン・キホーテだけではなく、他の小売業を買収して傘下に収めることでドン・キホーテグループとして事業を拡大します。
国内有数の企業へ成長
グループの店舗数は1989年にはドン・キホーテ1店舗だけだったのが、1998年には10店舗、2005年には100店舗、2008年には200店舗、2015年には300店舗、2018年には400店舗を超え、日本国内の小売業界では有数の企業に成長します。
その中で、1996年には株式店頭公開、1998年には東証二部上場、2000年には東証一部上場を果たし、一流企業の座を確たるものとします。
その成長戦略には活発なM&Aを含み、2013年には商号を株式会社ドンキホーテホールディングスに変更し、純粋持株会社体制へと移行します。
近年のターニングポイントとしては、2019年1月にユニー株式会社を傘下に入れたことが大きく、これにより2020年6月期には売上高1兆円を達成します。
PPIH従業員からの評判口コミ
責任ある仕事を任せてもらえる
チャレンジしながらキャリアアップできる
従業員のチャレンジする気持ちと多様性を受け入れてくれるため、国内外でチャンスが豊富にあり、自ら手を挙げてキャリアに合わせたポジションを目指すことができます。
女性が活躍できる制度が充実
PPIH従業員からの評判口コミまとめ
また、PPIHはグローバルに展開する企業ということもあり、国内・国外問わずに自分の目指すポジションにチャレンジできる風土となっているようです。
女性も働きやすい制度や環境づくりの取り組みも行っていることから、安心して働ける会社だといえるでしょう。
安田隆夫が創業したPPIHの成長
ドン・キホーテが成長できた理由としては、ナイトマーケット需要の発見、独特なお買い物空間の創造、信じて頼む「権限委譲」によりオンリーワン企業として躍進しました。また、プライベートブランド情熱価格や電子マネーサービス「majica」など、自社で商品を作ったことや新サービスを提供できる開発力があったことがあげられます。
日本の流通小売業界では、百貨店やGMなど古い業態が淘汰されつつありますが、PPIHは開発力を生かして長崎屋を再生させ、デフレやバブル崩壊による景気後退・不況にも強く、流通小売業界再編の中では台風の目となっています。
プライベートブランド情熱価格のリニューアル
ドン・キホーテの代名詞の一つでもあるのがプライベートブランド(PB)の情熱価格です。
オリジナル商品ブランドとしてユーザーの要望を取り入れつつ、その要望にひと工夫を加え、さらに皆が驚く低価格で販売されるPBとして、誕生から12年で3,900アイテムを発売しています。
現在のカテゴリーは、食品、雑貨、美容・健康、衣料品、家電、インテリア・家具・寝具、スポーツ・アウトドア、カー・自転車用品、ペット用品、バラエティなどとなっています。
その中でも特に人気や話題を集めたものといえば、家電では「ジェネリックレグザ」と騒がれた4Kテレビや1万円台の激安パソコン、生活雑貨ではベージックとトレンドを融合させたOUCHIシリーズなどが挙げられます。
2021年には、情熱価格が「安さばかりを追い求めた商品開発姿勢になってしまい、ワクワク・ドキドキといったドン・キホーテらしさを失っていた」として、もっとユーザーが求めるものを具現化するピープルブランド(PB)となるべくリニューアルすることを発表しました。
今後は、顧客の意見を取り入れて一緒につくるブランドとして、これまで以上に顧客のニーズを取り入れたブランドに変身していくことになるようです。
電子マネーサービス「majica」が成長中
電子マネーサービス「majica」とは、PPIHグループのドン・キホーテ、MEGAドン・キホーテ、アピタ、ピアゴなど、majica加盟店で買い物する際に使える電子マネーカードです。2014年3月にスタートしたサービスで、総会員数は1,000万人を突破しています。
特に近年ではスマホ決済・キャッシュレス決済の普及や認知の拡大により2020年の1月から8月のわずか8ヶ月間でmajicaアプリの登録者は100万人も増加し、アプリ会員は2021年4月時点で700万人を突破しています。
majicaは、現金不要で買い物ができる便利さに加え、通常の買い物でポイント付与やマイナポイント事業でのポイント付与などが受けられ、今後も成長が見込まれています。
ドン・キホーテの業態
ドン・キホーテ
ドン・キホーテは一般的な店舗として展開され、売り場面積は1,000㎡~3,000㎡となります。
取り扱っている商品は、若者・カップル層をターゲットとし、アミューズメント性を兼ね備えたバラエティショップとなっています。そのため、スーパーマーケットにはある生鮮の取り扱いはありません。
MEGAドン・キホーテ
ドン・キホーテとしては最も広い8,000㎡~10,000㎡の売り場面積で展開しています。
主婦・ファミリー層がターゲットで、生鮮を取り扱い、衣食住の実用日用品や食品が中心となっています。
NewMEGAドン・キホーテ
MEGAドン・キホーテと同じく主婦・ファミリー層がメインターゲットですが、売り場面積は3,000㎡~5,000㎡になり、MEGAドン・キホーテより取り扱い商品数は少なくなっています。
品揃えのラインナップは衣食住の実用日用品や食品が中心となりますが、生鮮の取り扱いが無い店舗も存在します。
ドン・キホーテUNY/MEGAドン・キホーテUNY
総合スーパー「アピタ」「ピアゴ」を業態転換した店舗で、メインターゲット層を主婦、ファミリー層とし、売り場面積は、4,000㎡~13,000㎡となります。ユニーが得意とする食品に加え、ドン・キホーテが得意とする非食品を大幅に増やしています。
スモールフォーマット
若者・カップル層をターゲットとし、特定商品に特化したコンビニ・ミニスーパー業態です。
売り場面積は300㎡~1,000㎡で、業態別では最も小型の店舗になります。
PPIHの業績/売上高
売上高
PPIHの売上高は、2017年6月期:約8,300億円、2018年6月期:約9,400億円、2019年6月期:約1兆3,300億円、2020年6月期:約1兆6,800億円、2021年6月期:約1兆7,080億円となり、グループの総売上が2兆円を目指せるレベルまで成長しています。
コロナ禍でもニューノーマル対応や巣ごもり需要の取り込みに成功して、逆境に強いPPIHらしさを見せつけました。
財務・業績情報
財務・業績について見てみると、2021年6月期中間の営業利益は約493億円を達成しています。
これは、帳合統合や海外での新しいバリューチェーンの構築、M&A成立後の経営の統合プロセス効果の継続、適切なコストコントールの結果だとしています。
そのほか、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益、1株当たり当期純利益も全て右肩あがりで、経営状態は良い状態だといえます。
まとめ
PPIHは効果的なM&Aでグループの規模を拡大し続け、安田隆夫さんが主張する「逆張り」戦略で不況やコロナ禍でもその成長はとどまるところを知りません。
そんな中でも安田隆夫さんは驕らず、「社員の頑張りがあってここまで来ることができた」と評し、顧客最優先主義と社員に権限を委譲する現場主義は今後も変わらないとしています。
これからも常識にとらわれない発想で、世界中に革新を起こし続けることでしょう。
会社概要
名称 | 株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス |
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所在地 | (本社) 〒153-0042 東京都目黒区青葉台2-19-10 |
設立 | 1980年(昭和55年)9月5日 |
創業者 | 安田隆夫 |
代表者 | 代表取締役社長CEO 吉田 直樹 |
資本金 | 231億5千3百万円(2021年6月30日現在) |
従業員数 | 16,838名(連結)(2021年6月30日現在) |
事業内容 | グループ会社株式保有によるグループ経営企画・管理、子会社の管理業務受託、不動産管理等 |
PPIHは、ディスカウントストアおよび総合スーパー(GMS)を中心に事業を展開し、売上高1兆7,000億円を超える大企業で、働きやすさや様々なことにチャレンジできる風土が社員からの口コミでも評判となっています。
本稿では、安田隆夫さんの生い立ち・経歴、現在の活動、信念などを調査し、日本最大級の総合ディスカウントストア創業者の人物像に迫りました。
また、安田隆夫さんが創業したPPIHの成長過程、評判口コミ、業態、業績などについても調査し、紹介していきます。