- 2024/04/22「現社長の小町剛について」を追加しました。
この記事の目次
レーサム元会長の田中剛とは
レーサムの元会長だった田中剛さんとは、1992年に26歳の若さで株式会社レーサムリサーチ(株式会社レーサムの前身)を設立した人物です。
株式会社レーサムリサーチは、富裕層向けの不動産の資産運用と資産形成のコンサルティングを業務としていて、不動産の価値を高める事業で業績を伸ばします。
田中剛さんが取り組んだ、収益不動産の流通市場を創り出すという行動は、不動産業界に新風を巻き起こしました。その後も日本初のSPC法を活用した国有財産の証券化を実現したり、ホテル業やゴルフ場運営に参入したりと会社は成長拡大を続けました。
その中心に常にいたのが田中剛さんで、不動産業界では名の通った人物です。
そこで、田中剛さんとはどのような人物なのか、プロフィールを調べて見たのですが、ネット上には多くの情報は見られませんでした。
昨今では、SNSなどで積極的に会社や自身のPRを行う経営者が多い中、田中剛さんは会社の成長に心血を注いできたことが分かります。
プロフィール
- 名前(読み):田中剛(たなかつよし)
- 生年月日:1965年(昭和40年)5月12日生まれ
- 出身地:北海道
- 学歴:日本大学理工学部中退
- 職歴:不動産会社、経営コンサル研究会主催、レーサム
レーサム元会長の田中剛の経歴
ここでは、田中剛さんがどのような経歴を持っているのか、調べてみました。
不動産ビジネス一筋の経歴
田中剛さんが最初に不動産ビジネスの世界に触れるのは大学時代で、渡米して現地で不動産ビジネスについて学びました。大学を中退したあとは、不動産会社に入社してトップの営業成績を残します。
その後は経営コンサルの研究会を組織して3年間で2億円を稼ぎ、それを元手に1992年5月に自身が社長となり、株式会社レーサムリサーチを創業します。
会社は初年度から8億円の売上を計上して成長を続け、1999年にはグローバル債権回収株式会社を買収し、代表取締役社長に就任します。
2001年にはIPO(新規株式公開)を行ってJSDAQへの上場を果たし、上場企業の社長というステータスも手にします。
その後も会社は売上高100億円を突破するなど成長を続けますが、2018年には若手や経営者を育てるという目的のもと、代表権のない会長に退きます。そして2021年には取締役会長の座も辞しています。
田中剛の会長辞任後の活動
2021年11月27日、田中剛さんは健康上の理由から、会社に辞任すると申し出て取締役会長から退きます。辞任する際にはレーサムの株式を寄贈して、会社に影響力を持たず、それまで育ててきた後進を完全に信頼する形で身を引いています。後任は代表取締役社長の小町剛さんが務めています。
田中剛さんはまだ55歳と経営者として働き盛りの年齢ですが、会長辞任後の活動は不明となっています。これまで会社や後輩たちのことを思って走り続けてきた田中剛さんなので、しばらくは充電してリフレッシュしているのかもしれません。
田中剛元会長がレーサムを設立した目的
田中剛元会長が高校生や大学生だった1980年代は円高ドル安により日本経済は不況に陷り、その後の「日本の土地価格は下がらない」という土地神話から土地の価格が暴騰する事態になります。
そして1990年代に入り、土地の売買という投資がトレンドになる中、弱冠26歳の若者である田中剛さんは、流通市場が未発達だった収益不動産の流通市場を創出するという目的のもと、会社を設立します。
収益不動産は、毎月一定の賃貸収入などがある不動産で、そういった不動産を富裕層向けに売り出し、資産運用や資産形成コンサルティング事業も行いました。
実は設立時の1992年はバブル崩壊直後で高値だった不動産価格は急落し、不動産業界は冷え込んでいましたが、体力のある富裕層向けに不動産資産運用サービスを提供したのが、レーサムが成長できた要因の一つです。
レーサム元会長の田中剛の実績
価値創造という新しい不動産投資の形
田中剛さんの実績は新しい不動産投資の手法を開発したことです。
従来の不動産投資は、資産運用に適した不動産、つまり土地や建物、設備などの状態が良く、その物件を購入したらすぐに顧客に提供できるようなものばかりでした。
しかし、田中剛さんの価値創造というコンセプトでは、資産価値があまりないような物件を用途変更したり、大規模改修で価値を高めたりすることで資産価値をもたせ、それを富裕層の顧客に販売したのです。
債権の買取り、価格評価業務
また、会社をワンランク上に押し上げることになったのが、1997年に始めた債権の買取り(債権回収・サービシング)、価格評価業務です。
これは不動産の価値を土地・建物・法的側面・周辺環境から算出する不動産鑑定業務と言われるもので、現在の株式会社レーサムの事業の根幹でもあります。
日本初、国有不動産の証券化
バブル後の不動産価値暴落への対策として、政府は不良債権(土地担保付きの貸付債権)を買い取る共同債権買取機構を設立し、さらに1998年にSPC法(資産の流動化に関する法律)を公布します。そして2000年、財務省による証券化を前提とした国有財産(不動産)の入札が行われ、レーサムはマンションなどの建物付き不動産8件を落札します。
これは、日本で初めてのSPC法を活用した国有財産の証券化となり、当時社長だった田中剛さんの名前は業界中に知れ渡ることになります。
わずか9年で会社を上場
不動産価値創造、債権の買い取り、国有不動産の証券化といった多くのニュースで不動産業界を賑わしてきたレーサムは、2000年には売上が100億円を突破し、2001年には満を持してIPO(新規株式公開)を行い、JSDAQに上場します。
1992年の会社創立からわずか9年で会社を上場させ、その注目度から上場当日には153億円ものレーサム株が取引され、当日の市場売買の約4割を占める伝説的な上場になりました。
ホテル業での失敗と別業態のホテル業を立ち上げ
打つ手の全てが上手くいくという状態で、新たに参入したのがホテル事業でした。
沖縄のリゾートホテルや札幌のビジネスホテルなどを購入しますが、売上が伸びずに撤退を余儀なくされます。しかしホテル業からの完全撤退ではなく、新たにユースホステルという業態に目を向け、ウィーベースというコミュニティ型ホステルを立ち上げ、地元コミュニティと旅行者の交流拠点や地元経済への貢献も視野に入れて活動を行っています。
ゴルフ事業では再生に成功
レーサムでは、子会社のアセット・ホールディングスを使って群馬プレスカントリークラブの営業権を得て、ゴルフ場「THE RAYSUM」(レーサムゴルフ&スパリゾート)の運営をしています。
再生では、ゴルフ場のカートや飲食メニューのリニューアル、家具・調度品の刷新などが行われ、ゴルフ場経営の全体像をガラリと一変させました。その結果、元々コース設定で人気のあったゴルフ場は、新たに日本国内最高峰のエグゼクティブなゴルフ場として生まれ変わり、人気を博すことになります。
さらに2008年には日本男子プロゴルフではトップクラスの大会である「第76回日本プロゴルフ選手権大会」が開催され、ゴルフ事業は大成功を収めています。
レーサムについて
ビジョン
レーサムではレーサムビジョンとして公式ホームページに以下の3つのビジョンを示しています。
- 不動産の価値の本質を見極め
- 社会に有用な形を実現する
- 価値の共創を行うこと
不動産物件を扱う会社として、顧客の資産運用や収益性などの想いに価値の源泉があると考え、その実現のために社内で知見を結集し、多様なサービスを提供し続けることで価値の共創ができると考えています。
レーサム現社長の小町剛について
レーサム元会長の田中剛さんから経営を引き継いだ小町剛さんは、2018年に同社の代表取締役社長に就任した人物です。
「未来に向けて人のエネルギーが増幅していく事業」に力を入れており、レーサムの事業活動が地域社会、ひいては国の活性化に繋がると信じ、会社経営に取り組んでいます。
私生活では6人の子を持つ父親で、公立小学校のPTA会長を務め、地域活動にも積極的に参加するなど、社外でも社会貢献への意識が高い人物であることが伺えます。
レーサムが掲げる「不動産を変えるチカラ。」の理念のもと、挑戦し続ける姿勢も評価されています。
小町剛の経歴
小町剛さんは1972年に神奈川県で誕生し、小学校から高校までバスケに取り組むスポーツ少年でした。
高校時代にはアメリカ留学も経験しており、そこで学んだ多様性のあるチームづくりが、レーサムのフラットで風通しの良い組織文化づくりに活かされているのかもしれません。
高校卒業後は慶應義塾大学法学部に進学し、大学卒業後の1996年に三和銀行(現:三菱UFJ銀行)へ入行したのち、2005年にレーサムへ入社しています。
入社から2年後の2007年には常務取締役 経営企画ユニット長兼社長室長に就任、2011年には常務取締役 戦略投資本部長に就任するなど、着々と昇進を重ねていきました。
そして、2018年6月にレーサムの代表取締役社長に就任し、2024年現在も同社の社長として活躍しています。
レーサムの事業内容
資産価値創造事業
資産価値創造事業では、社会の状況に対応し、収益性と資産価値が高まる不動産のあり方を研究しています。収益性と資産価値が高まる不動産を見つけ出した後は、その物件を購入して自社保有とし、用途変更や大規模改修を含む抜本的な改良を行います。
具体的には、築50年が経過した古めのワンルームマンションがあったとして、室内はリノベーションされてまるで築浅のように感じ、さらにバルコニーや温水洗浄便座付きのトイレなど、付加価値をつけるのです。これにより、周辺の同条件の物件よりも高い賃料の設定が可能になり、物件の収益性と資産価値は大きくアップします。
各物件は、レーサムの専門チームが全てのプロジェクトにおいて完全にオートクチュールでプランニングします。
プランニングには物件単体という狭い視野ではなく、周辺コミュニティや自治体との連携、環境保全など多角的な視点も考慮し、社会に有用な不動産資産の創出を目指しています。
この事業の主な物件規模は数10億円〜100億円で、商業ビルやオフィス、マンション、医療・宿泊・教育施設などを扱っています。
資産価値向上事業
資産価値創造事業が販売なら、資産価値向上事業はサポートと言える事業です。
顧客に対して販売した物件について、資産価値を維持向上させるための賃貸管理、建物管理業務等を行っています。ただし、単なる管理業務だけではなく、将来に向けた資産価値向上プランも提案して、資産価値の中長期的な向上を目指します。
未来価値創造事業
地方コミュニティの縮小や日本の超高齢化社会など、現在、そして未来の社会課題に対応するのが未来価値創造事業です。
具体的には、地域に溶け込むコミュニティホステルや高齢化社会に必須の高度医療専門施設、増加する自然災害に備える非常用電源開発などです。
この事業運営を通して蓄積した経験やナレッジは、資産価値創造事業と資産価値向上事業における構想力、提案力として活かされ、自社内で事業のシナジー効果が望めます。
受け継がれる7つのレーサムイズム
7つのレーサムイズム
1.
真にお客様のためになる不動産は、社会の優良資産になる。
真に社会のためになる不動産は、お客様の優良資産になる。2.
過去の成功体験を捨て、未来からの逆算で考える。
未来社会に必要とされる資産価値を追求する。3.
お客様の想い×物件の潜在価値の理想形がある。
1件1件オートクチュール。知見を結集し、理想を実現する。4.
“面倒”を厭わず、みずから“面倒”に突っ込む。
“面倒”の先にこそ、新しい価値が生まれる。5.
安易なスクラップ&ビルドは、文化と社会価値を毀損する。
受け継ぐべきものを受け継ぐために、全力を尽くす。6.
販売は、お客様の想いを受けとめ、スタートラインに立つこと。
共に中長期の価値向上を追求することが、レーサムの仕事である。7.
お客様との信頼関係、地域社会・パートナーとの信頼関係、
そして社員同士の信頼関係。これ以上に大切なものは存在しない。(引用元:https://www.raysum.co.jp/raysumism/)
まとめ
若くして会社を立ち上げた経歴、日本初の国有財産の不動産の証券化を実現するといった実績は不動産業界で伝説的な存在として語られています。
会長を辞任した後は表立って活動している様子がありませんが、辞任の理由が健康上のためとなっているので、早く万全な状態になり、再び不動産業界の表舞台で活躍する姿が望まれます。
会社概要
名称 | 株式会社レーサム |
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所在地 | 東京都千代田区霞が関3-2-1 霞が関コモンゲート西館36階 |
設立 | 1992年5月1日 |
代表者 | 代表取締役社長 小町剛 |
連結純資産 | 534億33百万円(2022年3月31日時点) |
免許等 | 宅地建物取引業 東京都知事(7) 第63142号 不動産鑑定業 東京都知事(5) 第1569号 不動産特定共同事業 東京都知事 第47号 一級建築士事務所 東京都知事 第55605号 金融商品取引業第二種金融商品取引業 関東財務局長(金商)第1150号 金融商品取引業投資助言・代理業 関東財務局長(金商)第1150号 賃貸住宅管理業 国土交通大臣(01)第003936号 |
レーサムの事業は独自の不動産再生・リノベーションや日本初の国有財産の不動産の証券化を実現するなど、これまでにない手法で急成長を果たします。
その全ての舵取りはレーサム元会長の田中剛さんだったので、不動産業界では田中剛元会長の経歴や実績などが大きくクローズアップされることになりました。
現在は、健康上の理由で会長の職を辞任していますが、不動産界の伝説的な人物なので、本稿では、田中剛さんのプロフィールや経歴といった基本的なことから、レーサムという会社について、そして田中剛さんの現在の活動までを徹底的に調査していきたいと思います。