大学病院を始めとする様々な病院勤務による安定と十分な年収を手放してまでご自身が挑戦を始めた理由、そしてその先に見据える医療の未来とは、一体どのようなものなのでしょうか。
※当コンテンツはアフィリエイト等を目的として、試供品または取材費をいただいて記事を掲載しています。
医療体制の厳しさを感じ起業


はじめに、柳川さんが歩まれてきた医師としてのキャリアや、起業に至るまでの経緯を教えてください。

私は信州大学医学部を卒業後、同大学の附属病院で脳神経外科医として研鑽を積んでおりました。
長野県という“医療過疎”といわれる地域に身を置き、医師不足や高齢化が進む現場を目の当たりにしたのです。
遠距離通院を余儀なくされる患者の方々、手術・当直が連日のように続く医師たちの姿……。現実には医療体制の厳しさを、医師の体力と気力で何とか乗り切っている部分が大きいということを日々感じていました。
そんな環境のなかで「誰かがこの歪みを変えなければいけない」という想いが強くなり、海外で盛んに活用され始めていた遠隔医療やIoT等を始めとするデジタルヘルスの力を日本でも本格的に広めたいと考えるようになりました。

そこで実際に、どのような形で事業家・起業家としての一歩を踏み出されたのでしょうか?

最初に取り組んだのは、IoMT(Internet of Medical Things)の可能性を追求する学会を立ち上げることでした。
医療とテクノロジーを掛け合わせ、遠隔医療やオンライン診療、IoTデバイスによる連続心電図検査などを実装するため、学術面からも情報を蓄積していこうと考えたのです。
それがきっかけで、複数の企業や医療機関とのつながりが生まれました。
その後、本格的に自分自身でビジネスを進めていく必要性を感じ、起業を決断し、現在のドクターズ株式会社を立ち上げました。
医療現場のニーズを的確に反映した医療サービスを作ること。そして、単発のサービスではなく、複数のサービスを束ねる土台となるプラットフォームを作ること。この2点を軸にしています。
高年収を捨ててまで実現したいこと


柳川さんは病院の勤務の中で手術も数多く執刀され、高い専門性・経験を積まれてきました。それを手放してまで起業した“決め手”は何だったのでしょうか?
正直、医師としてその道を極めていくことは、やりがいがあり経済的にも安定が望めたと思います。それでもあえて、安定した生活を捨てる選択をしたのは、やはり現場で苦しむ医師たちの姿を見たからです。
臨床現場の経験から、「目の前の治療行為を昼夜問わず行い続けることは、医師のマンパワーに限界が来る」と切実に感じたからです。働き方改革など制度的な課題も進む中で、地域の病院だけでなく、全国的に医師の負担はさらに増えてきています。
デジタル技術の導入は急務なのですが、現場が忙しすぎて開発や導入にまで十分なリソースを振り向けられない。
そこで、医師の経験を持つ自分が、医療とテクノロジーの橋渡しとして事業化を進める。これが最も必要とされるポジションだと確信しています。

自分がその橋渡し役をやるべきだとも思っています。
医療現場で使えるサービスを支援


実際に起業後はどのようなサービスを展開されているか、もう少し詳しく教えてください。

大きく3つの柱があり、1つ目は「Doctors Hub™」です。
ここでは、大手企業のお客様を中心に、デジタルヘルスサービスの事業開発支援やコンサルティングを提供しています。
単に目新しいだけのアプリやサービスでは、医療の世界で通用しません。徹底した医療現場目線にたった、事業企画やアプリ設計に加えて、医療的エビデンスの付与や、必要に応じた臨床研究、認証取得などを総合的にサポートします。
いわば、「本当に医療現場で使える状態」へと導くご支援を提供しています。

2つ目は「Doctors Next®」です。
デジタルヘルスの流通経路はまだ確立されておらず、「良いサービスがあるのに医療機関や患者の皆様に届かない」という課題があります。
そこで医療の現場とメーカーを結びつけ、幅広く利用・普及していくルートを構築するのがこの事業ですね。

3つ目が「Doctors Station®」です。
医師の視点と患者の視点の双方から必要とされる様々なソリューションを束ねた、新しい医療サービスを構築できるプラットフォームを提供しています。
例えば企業が新たに医療・ヘルスケア分野に進出する際に、ご利用いただくことで、本格的なオンライン医療支援サービスをスピーディかつ低コストで新規サービスを構築できます。
このようなプラットフォームを通じて、どこに住んでいても、いつでも誰もが安心して医療を受けられるという理想を少しずつ形にしているところです。

そうした新しい医療サービスづくりにおいて、大事にしているポイントや想いはありますか?
一番大切なのは、医療の本質を踏まえることです。医療は患者の命を預かる分野ですから、単なる「便利」や「効率性」だけでは続きません。
オンライン診療でも同じです。医師とのコミュニケーションや、確実に必要な検査につなげる導線づくりなど、医療の安全面を常に意識しながら設計しなければならないのです。
私自身も一人の脳神経外科医として、現場の大変さや責任の重さを嫌というほど知っています。
だからこそ、医師が本当に困っているポイントを解消したい。

患者の皆様にとってより安心・安全・便利なサービスを目指して、技術開発や企業連携を推進しているのです。
エキスパート医師と連携して社会実装を加速させる


最後に、柳川さんがこれから実現したいこと、読者へのメッセージをお願いします。
コロナ禍を経て、遠隔医療やデジタルヘルスの必要性が社会全体で認識され始め、今が大きな分岐点だと感じています。
「どこにいても適切な医療が届く世界」を実現するために、エキスパート医師や顧客企業、そして自治体や行政とも連携を深めながら社会実装を加速させていきたいと思っています。
十分な年収や生活の安定という選択肢を手放してでも、一歩踏み出す価値があると確信しています。それは、実際に医療の“過疎”や“ひずみ”を肌で感じてきたからです。
また、課題を感じているのは日本だけではないと考えています。世界で日本と同じような課題を抱えている現場は無数にあるはずです。日本に留まらず世界にも目を向けていきます。

もし今、何かを変えたいという想いがあるなら、ぜひ皆さんも一歩前に踏み出してほしい。そうすれば、より大きな可能性や新しい風景が広がるはずだと思います。
まとめ
医師としての豊富な経験と、現場を良くしたいという強い想いを原動力に、あえて安定した道を捨て、起業という選択をした柳川貴雄さん。
医療とテクノロジーを積極的に結びつける姿には「現場から医療を変える」というビジョンの確かさが感じられました。

「誰もが安心して医療を受けられる未来」に向け、ドクターズの取り組みはさらなる飛躍を見せてくれるに違いありません。
会社概要
会社名 | ドクターズ株式会社 |
代表者 | 代表取締役 兼 CEO 柳川 貴雄 |
所在地 | 〒105-0011 東京都港区芝公園2-3-6 PMO浜松町II 5階 |
設立年月日 | 2016年9月26日(2019年10月21日事業開始) |
資本金 | 2,538,985,000円 (資本準備金含む) |
事業内容 | 医療DXを事業領域とした事業開発関連の統合的ソリューションの提供。 ・デジタルヘルス企画・開発支援サービス「Doctors Hub™」 ・医療DX事業構築支援サービス「DX Platform」 ・デジタルヘルスマーケティング・流通支援サービス「Doctors Next®」 ・【一般企業・団体向け】オンライン医療活用支援サービス「Doctors Station®」 ・【医療機関向け】オンライン医療導入支援サービス「Medical Strategy」 |
本日は、ドクターズ株式会社 代表取締役社長兼CEOであり、脳神経外科専門医でもある柳川貴雄さんにお話を伺います。