日本IBM米山貴之様/AI時代のデジタル変革とコンサルティングの今後

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編集部
昨今注目されているコンサルタント及びコンサルティング業界の魅力と今後について、日本IBMのビジネス・コンサルタント 米山貴之様に、コグニティブ技術や、デジタル領域の取り組みなども伺っていこうと思います。
※本記事は2018年4月にインタビューさせていただいた内容をもとに作成しております。現在、下記募集要項で中途採用していない可能性もありますので、詳細は直接企業へお問い合わせをお願いいたします。
当コンテンツはアフィリエイト等を目的として、試供品または取材費をいただいて記事を掲載しています。

今回の取材回答者:米山貴之氏のプロフィール

米山貴之氏の顔画像
米山貴之氏の経歴

日本アイ・ビー・エム株式会社 グローバル・ビジネス・サービス
シニア・マネージング・コンサルタント

広告代理店、コンサルティング・ファームを経て日本アイ・ビー・エムに入社。
ビジネスコンサルタントとして、製造、製薬、通信、メディア、流通など業界における、CRMや業務改革、戦略構想におけるデジタル変革に従事。
組織改革、先端テクノロジーを活用した戦略および、マーケティング領域、業務改革、実行支援等のプロジェクトをリード。経営学博士。

会社・サービス概要

日本IBM株式会社 グローバル・ビジネス・サービス

IBMグループの世界最大級のビジネスコンサルテイングファーム(GBS:グローバル・ビジネス・サービス)。

今までの経緯としては、2002年10月にIBMがグローバルのPwCコンサルティングを買収し、よりシナジーを強化するために、2010年4月にIBMとIBMビジネスコンサルティング サービス(IBCS)が統合。

コンサルティングサービスにかかわる豊富な実績を基盤に、世界のIBMグループと密接な連携をとりグローバルベースでの連携し、人工知能watsonを中心に、ビジネスコンサルティングからシステム構築、業務アウトソーシングまで一貫したサービスをグループとして提供。

コンサルティング業界の成り立ちと現状

編集部
コンサルティングの業務や定義が大きく変化し、影響力が大きくなってきていると感じています。どの様な背景や現状があり変わってきているのでしょうか?
日本IBM 米山貴之様
元々コンサルティングは、海外で企業の会計監査やそのアドバイスを行っていましたが、企業運営を、方針と具体性をもった経営にする為に、経営戦略を指南するというところから始めっています。

その中で、ビジネススクールや経営研究家が様々な便利な考え方をフレームワークとして作ってきました。

しかし、現在では、ビジネススクール的な知識やフレームワークの陳腐化が進み、誰もがその情報や考えにアクセス出来る状況となっています。いわゆるITがバブル時期の様に、技術が経営に大きなインパクトを与える事が分かっていた時代ではそれを取り入れる事が、手段であり、戦略でもあった時代もありました。

そして、昨今ではAIやデジタルという、社会構造自体に大きく影響を与える時代になり、産業構造や業界自体の境界線が曖昧になってくる中で、課題は複雑化し、国や業界を超えて課題が複雑化してきていると感じています。

企業の課題はもちろんながら、個人の行動や趣向が多様化する中で、課題を捉え、とるべき対策を予測したいという、具体性が高いコンサルティングのニーズは増えてきていると感じています。その一つがAIやデジタル技術と捉えてます。

IBM Watsonのコグニティブ・テクノロジーとは

編集部
Watsonの活用実態や、コンサルティングとの連携はどの様にされているのでしょうか?
日本IBM 米山貴之様
実は、IBMでは、AIという言葉で人口知能やその付帯技術を指すことはありません。Watsonという人工知能をコグニティブ(認知技術)と呼んでいます。

その一例と挙げますと、例えばガン治療を目的としたゲノム解析では、スーパーコンピュータの進化によってすでに約250万個の変異の候補が発見されています。しかし、患者個人のガンの原因となっている特定の遺伝子を絞り込むのは、人力を超えた世界となります。

そうしたなかクラウド上の知識ベースに登録されている2400万件以上の生命科学に関する論文をAIに読み込んで学習させるというアプローチを推進しています。

これにより最終的な標的となるガン遺伝子の候補を数個にまで絞り込むとともに、東京大学医科学研究所の附属病院において臨床試験が始まりました。

ほかにも自動車の自動運転や株式市場の超高速トレーディングなど、応用分野は業界を跨ぎ多岐にわたります。

IBMの先端テクノロジー活用とコンサルティングの取り組み

編集部
ほぼ全ての業界、社会全体が人工知能の能力に頼り、寄り添う時代がくると感じています。

その様な状況の中で、AI時代のコンサルティングはどの様に差別化され、IBMでは、どの様にAIをコンサルティングに活用していますか?

日本IBM 米山貴之様
現在のコンサルティング手法は、定義されたビジネス命題に対して仮説を設定し、それを裏付けるデータを収集・分析し、施策を策定・計画し、実行するというサイクルを繰り返します。しかし、そのプロセスではコンサルタントによる恣意性が発生する恐れがあります。

IBMでは、人材採用に機械学習を取り入れ、最適化をしたり、コンサルティングのプロセスに機械学習や深層学習やコグニティブ領域の技術を取り入れ、システム自身にデータの収集や仮説の探索を行わせようともしています。

また、IBMは国を跨いだ著作権管理の仕組みとして、デジタル著作権管理領域におけるブロックチェーン技術を活用した可視化の取り組みを、仏国SACEM、米国ASCAP, 英国PRSと共に推進しています。

今後のビジネスコンサルティングに求められる価値と課題

日本IBMのビル外観
編集部
コンサルティングという職種の人気や重要性が人材市場でも高まってきていますが、具体的というのは実感としてフィーに値するものや、実業務を行うという所まで入っていきますか?
日本IBM 米山貴之様
どの業界も業界内の成功事例は勿論ですが、業界を超えた、新たな情報やヒントを重要視しますし、また具体性というのは新しく事業を立ち上げるにあたって自社の都合やポジションで妥当か、何をしてくれるのか?という点を見られます。

単純に集まったコンサルタントメンバーで、その人数分のアイデアや解決力の足し算をするコンサルティングは難しくなってくるのではと考えています。

例えば、Appleのデザイン・コンサルティングを行ったFrogデザイン社は当時30人でした。

「デジタル」や「AI」は手段であって、目的は「イノベーション」や変革です。

昨今コンサルティング会社が、様々な広告代理店やデザインカンパニーと買収していますが、それも複雑な課題を解決し、高度な変革をする為の「掛け算」という考え方ができると思います。

「デジタル」や「AI」イメージ

経営マネジメントにおける競争力と共創力

編集部
外部技術の取り込みという点では、AI(人工知能)や機械学習やブロックチェーンなどが世の中を変える技術として注目されていますが、︎競争力や差別化として取り入れる為に、重要な事はどの様な事でしょうか?
日本IBM 米山貴之様
業界や課題に応じて異なります。

ヘルスケア・製薬業界

日本IBM 米山貴之様
例えば、現在のヘルスケア・製薬業界では新たなビジネスモデルの確立と展開を進める事が急務です。しかしながら日本の高齢化社会への対応策は政策としてのガイドラインがなく、自社で新規事業に注力し、リソースを出す事が難しい状況です。

弊社でも製薬会社様とジョイント・ベンチャーを設立しましたが、「戦略としてのデジタル化」の中で、テクノロジーベンチャーとの連携や、ジョイント・ベンチャー設立を行う事が、事業戦略や投資戦略の一環として取られています。

製造業界

日本IBM 米山貴之様
また、 製造業界では、ビジネス構造上、市場価格に応じて生産量や売る量の調整が重要であり、この調整具合で業績が大きく変動します。そのため、クライアントも、原材料を運ぶトラックにセンサーをつけたり、生産現場においても似たような取り組みを行ったりして、それなりにデータの抽出や分析は行っていました。

しかし、例えば海上で輸送されている量はどの程度なのか、稼働率はどの程度なのか、何が購買決定要因か。そこまでの情報は、把握できていませんでした。つまり先に話したように、複雑化する課題や、分析から導き出した部分解を連携させる事ができていないのです。

「競争力」より「共創力」

日本IBM 米山貴之様
共通して、重要な事は変革する範囲や、変革の為の要件をどう導くか?だと思います。

これらは現在の企業課題の基礎問題でありながらも、旧来の企業文化や評価制度、ナレッジの不足が影響している事がほとんどではないでしょうか?

ですので、我々はデジタル・ガレージを作り、プロジェクト型でお客様とチームを組み、アイデアの創出から、PoC・顧客実証実験までをアジャイルに繰り返す場を提供してります。

ですので、重要な事はかけっこに勝つ「競争力」より、キャンプで楽しい出すものを考える様な「共創力」ではないでしょうか?

日本IBMの解説図

AI・デジタル活用における、コンセプト検証の重要性と課題

編集部
なるほど、共に何かを創る「共創力」ですね。共にという意味では、企業間での共創もありますが、デジタル技術と共に何をどう創るか、という方法論も重要になってきそうですね。
日本IBM 米山貴之様
それらを蓄積する事は、非常に重要と考えています。

実はコンサルティング業界や人工知能領域の研究家、開発者もひざを突き合わせてお客さんと付き合う事が出来ていない、というのは業界の課題としてあるのではないでしょうか?

特に製造業や製薬業など研究開発が重要な領域では、人工知能をはじめとした技術活用が重要でありながらも、形だけの戦略が先走って、フィジビリティの確認や、 PoC(Proof of Concept=試作プロジェクトの検証)が適切なリードの元で行われているケースは少ないはないのではと思います。

日本IBM米山貴之の顔画像

加速度的に高度化する技術とバックキャスト思考

編集部
「PoC」が「PoT」になっている、と。私もSIerで働いていたので、その感覚には共感できます。要件定義までのプロセスに不足があったり、定義そのものが変わると、Proof(証明やビジネスへの道筋)につなげる道筋を再構築しなければいけませんからね。
日本IBM 米山貴之様
GoogleやAmazonを初めとしたデジタル・ジャイアントと呼ばれる企業は、まず価値になりそうな小さなサービスを何度も改善し、世の中に出しながらも改善をしていますよね。

GoogleはA/Bテストそのものでサービスの効果分析を繰り返していますし、AmazonはECサービス事業だけではないですが、ECサイトのユーザー・インターフェース改善にかける予算は、事業予算の3割とも言われています。

IT導入の為にリサーチやヒアリングを経て、じっくり時間と労力をかけ定義したシステム要件は、ソリューションが出来上がる頃には過去の要件になってしまいます。それではシステム寿命は減りますし、加速度的に高度になる現在の技術変化に追いつく事は難しいです。

いかに未来をフォーキャストし、さらにバックキャスト(バックキャスト思考)をして、目標となる未来を定めた上で、現在を振り返り、今何をすべきか定める将来構想能力も求められてくると思います。

そして、第三者としてのコンサルタントではなく、当事者として部下やお客様を巻き込むファシリテーション力、そして力強いと熱意が必要です。

編集部
本日は忙しい中、ありがとうございます。ビジネスと先端技術の双方を理解し、指南する事は、非常に難しそうですが、「AI時代のコンサルタント」に興味がある方は、米山貴之様へ問い合わせください。

会社概要

会社名日本アイ・ビー・エム株式会社
所在地〒103-8510
東京都中央区日本橋箱崎町19-21
設立1937年(昭和12年)6月17日
代表者名代表取締役社長執行役員
山口 明夫
資本金1,053億円
事業内容情報システムに関わる製品、サービスの提供